解説やお知らせなど:ページ1


●温泉とは何か

温泉法全文はこちら)を要約すると「温泉」とは以下の様に定義されています。
  • 地中から湧出する温水、鉱水、水蒸気、炭化水素を主成分とする天然ガスを除くガスについて、 温泉源から採取される時の温度が摂氏25度以上あること。
  • 温度が25度以下でも別表に掲げる19種の物質の内いずれか一つが規定値を上回るもの。
正にザル法ですね。法律っぽくするため文章をこねくりまわしてますが、それが故に穴だらけになっている気がします。 もっと単純に「地上に自然湧出する時の温度が30度以上の水、または水蒸気」程度で良いのではないでしょうか。

この法律が制定された時は(昭和23年)25度で地上に湧出していることしか想定していなくて、ボーリングで地面を掘ることは 考えていなかったんでしょうねぇ。(改正は何度もされているが)
通常、地面を100m掘ると水温は2、3度上昇します。ということは、1300mも掘って採取した地下水は確実に25度以上となり、 立派な温泉が採取できるということになります。
例の地下水問題での水道水沸かし風呂は問題外ですが、地下水沸かし風呂なら、地下深く掘って 採取した温泉とそう大差はないように思います。

成分もそうです。規定の成分がある一定以上あればたとえ0度の水でも温泉になります。 泉質の分類のため、成分が云々言うのは理解できますが、成分さえあれば何度でも良いというのはどうもいまいち納得できかねます。

それでも、採取された地下水をそのまま加熱して使用する分には温泉と言ってもまだ良いと思いますが、 加水することに何の制限もないという所がこの法律の最大の穴ですね。
水道水を沸かしたお風呂に、この法律で言うところの温泉を1滴混ぜたらたちまち天然温泉です。
この手口で「天然温泉使用」と謳っていた施設が槍玉に上がってましたが、それで言い逃れできると本気で思っていたのでしょうか? これならまだ「○○温泉」という住所に建っているだけで、温泉水を使用していないと明記している「○○温泉△△旅館」の方がよほど良心的です。
もちろん入浴剤を混入していても、着色して金泉と称しても、この法律では何ら問題ありません。

2005年2月24日、温泉法の一部が改正されました。(施行日は、5月24日)(ソースはこちら
改正の要点は、これまでの「温泉の成分等の掲示」に加え、温泉成分に影響を与える次の4項目について追加して掲示することになったことです。
  • 温泉に「加水」している場合、その旨及びその理由
  • 温泉を「加熱」している場合、その旨及びその理由
  • 温泉を「循環」している場合(「ろ過」を含む)その旨及びその理由
  • 温泉に「入浴剤」を加えている場合、又は温泉を「消毒」している場合、入浴剤の名称、消毒方法、及びその理由
改正内容そのものは評価しますし、上の情報は是非とも掲示して欲しい所ではありますが、ザル法の本質は何も変わっていません。 大量の水に1滴の温泉でも「加水」していると掲示すればOKです。理由は「湧出量が少ないことに加え、温泉資源を保護するため」とでも謳えば印象もいいですね。 こんなことでは改正の目的もへったくれもあったもんじゃありません。もっと本気で真面目に考えて改正して欲しいもんです。

温泉法の別表
含有物質名 化学式 規定含有量(1Kg中)
ガス性のものを除く溶存物質   総量1000mg以上
遊離炭酸 CO2 250mg以上
リチウムイオン Li+ 1mg以上
ストロンチウムイオン Sr++ 10mg以上
バリウムイオン Ba++ 5mg以上
第一鉄または第二鉄イオン Fe++,Fe+++ 10mg以上
第1マンガンイオン Mn++ 10mg以上
水素イオン H+ 1mg以上
臭素イオン Br- 5mg以上
沃素イオン I- 1mg以上
フッ素イオン F- 2mg以上
ひ酸水素イオン HAsO4-- 1.3mg以上
メタ亜ひ酸 HAsO2 1mg以上
総硫黄 HS+、S2O3--、H2Sに対応するもの S 1mg以上
メタほう酸 HBO2 5mg以上
メタけい酸 H2SiO3 50mg以上
重炭酸水素ナトリウム NaHCO3 340mg以上
ラドン Rn 100億分の20キュリー単位以上
ラジウム塩 Ra 1億分の1mg以上